n19p03_021 ©1986 中島敏

労災事故死を伝える張り紙には、36際、沖縄県出身とある。「若いなあ」と一言、中島は思い出したように沖縄出身の労働者について次のようなエピソードを語った。

津守あたりのほうでね、沖縄の人らがベランダのコンクリ打ちやっててね。コンクリごとだーっと下へ落ちてしまってね。マンションのベランダ部分のコンクリ打ちですよ。結局、型枠の強度が足りなかったんやね。ものすごいコンリートの重量。水の何倍かあるんですよ。強度計算してベランダに張り出してる型枠だったら、簡単に落ちることはないんですよ。それがもう、一箇所落ちたら、重みで全部順繰りに落ちてしまって。犠牲になったのは、沖縄の労働者やな。【お一人なくなったんですか。】いやもう、一人二人やないよ。出稼ぎの労働者やったね。

2020年1月30日